沖縄市、平成30年の観光客数を見直す
現在進められている泡瀬干潟・浅海域埋立事業(沖縄市東部海浜開発事業)の、平成30(2018)年の沖縄市推計の沖縄県入域観光客数850万人を、沖縄市は2013年3月26日の市議会答弁で、島田東部海浜開発局長(建設部副参事)は、「850万人を690万人にする」、推計式も変更することを表明しました。桑江直哉議員の質問に対する答弁でした。
沖縄市推計の850万人、その推計式(回帰式)については、2010年7月に公表されて以来、泡瀬干潟を守る連絡会は、その合理性の無さを指摘し続け、市議会でも池原秀明議員、桑江直哉議員がその合理性の無さを追求し続けてきました。当然のことながら今争われている「第二次泡瀬訴訟」でも原告は、訴状、準備書面、専門家意見などでその合理性の無さを指摘し続けています。
これに対し沖縄市は、これまで沖縄市の推計は正しいと、おおよそ次のように議会では答弁し、また、裁判の沖縄市答弁書、準備書面に記載していました。
1.
沖縄市の推計は、沖縄県の平成28年の目標値1,000万人より堅めの想定である。
2.
昭和61年から平成20年までの県入域観光客数の実績値(一貫して増加傾向にあった)から推計した結果、算出したものである。
3.
確かに平成21年から23年までの入域観光客数の実績値は、沖縄市が推計した値に達していない。しかし、(様々な条件から)沖縄県の入域観光客数が再び増加していくことが予想される。
4.
したがって、沖縄市による推計値は妥当性を有している。
冒頭述べた、沖縄市の平成30年の観光客数見直しは、これまでの沖縄市の見解を根底から覆す極めて重要な変更です。
今議会の正式な答弁書は次の議会(6月)の直前に公表されますが、沖縄市は今議会の「映像」は公開していますから、それから先の島田局長の答弁を再現すると次のようになります。
『(入域観光客数について) 平成22年に策定いたしました土地利用計画市案において、入域観光客数は平成20年度観光要覧を基礎資料として昭和61年から平成20年までの沖縄県の入域観光客の推移からトレンドによって推計しておりますが、平成23年までの実績をもとにしますと平成30年は約690万人なります。(数式の件もございましたが)推計式につきましては平成23年までの実績値を加味した場合の推計式は、Y=−0.1429X2(X2乗)+20.144X+178.12 になってございます。 』
沖縄市は、これまで上記の平成30年850万人を基に様々な需要予測をおこなっており、現在の埋立事業はその数値を根拠にしていますから、現在の埋立事業は、その根拠を失い、経済的合理性がなく、「中止」しなければなりません。
そのまま推進するとしても、需要予測を見直し、計画を大幅に変更しなければなりませんが、現時点でその変更はできていないことから、計画見直しができるまで「中断」しなければなりません。
推計式(回帰式)は、これまでは、Y=0.1919X2(X2乗)+13.238X+201.72 でした。
これまでの式は正の二次方程式であり、下に凸であり、Xの値が大きくなるとYの値が極端に大きくなることから、その推計式(回帰式)では例えば平成40年には1126万人と信じられない値になると批判してきた。
ところでこんどは、負の二次方程式である。上に凸の二次方程式であるから、平成67年を頂点にしてそれ以降は減少に転じ、さらに経過すると、観光客数は負(−)になってしまう。さらにこの式では、昭和61年から平成24年までの実績値と予測値が一致しないなどのデタラメさである。数式を弄んでいる、と言わざるを得ない。
参考までに、850万人をもとにした沖縄市の平成30年の需要予測と、690万人の場合の変更値を( )に示します。
注:以下の数値は、沖縄市の推計に合理性がなく信頼できない数値であるが、仮に沖縄市の数式で計算しても大幅な需要予測の減少になることを示す。
1.
東部海浜開発地区入域観光客数約41万人(33万人)
2.
沖縄市観光客数68万人(55万人)
3.
東部海浜新規宿泊需要数13万人(8.2万人)
4.
東部海浜入域観光客の買い物需要10.9万人(8.8万人)
5.
東部海浜入域観光客の飲食需要26.7万人(21.5万人)
6.
東部海浜入域観光客のスポーツ需要0.5万人(0.4万人)
7.
東部海浜入域観光客の展示施設需要7.6万人(6.1万人)
8.
東部海浜入域観光客のビーチ需要10.3万人(8.3万人)
9.
東部海浜入域観光客の野鳥園需要9.8万人(7.9万人)
10.東部海浜入域観光客の保養・休養需要9.5万人(7.7万人)
11.東部海浜入域観光客のフイットネス需要12.8万人(10.3万人)
12.東部海浜入域観光客のマリーナ需要0.2万人(0.17万人)
13.東部海浜入域観光客の小型船だまり需要4.9万人(3.9万人)
沖縄市案の機能別の需要と施設規模に対する需要(沖縄市案4頁)で上記の数字(3〜13までの数値の減少数の合計約24万人)を当てはめて計算すると機能別の需要415万人は391万人(415−24)となる。施設規模に対する需要は80%で堅めの計画とされているが、機能別の需要が減少したことで、施設規模の需要は84%に上昇し「堅めの計画」とは言えなくなる。