「沖繩タイムス」2015年2月25日の「時事漫評」です。
泡瀬干潟が破壊され、土砂で埋められ、トカゲハゼなどの生き物が危機的な状況にあるのに、今度の地裁判決は、それを全く無視し、トカゲハゼなどの生き物の目を塞ぎ、黙って見過ごせと言っているようなものだ、という状況を的確に描いています。実際にトカゲハゼの生息地(仮設橋梁横、比屋根湿地前の泥干潟)は、砂の堆積が進み、トカゲハゼの生息環境ではなくなりつつあり、私たちが調査に行っても、成体を見つけるのは非常に困難な状況です。
それを具体的に示しているのが次の資料(国・県が設置した「環境監視委員会」・2014年7月14日で提出された、平成25(2013)年度の調査結果報告・概要版、P2−83)です。
これを見ると次のことがわかります。
1.
平成25年度は、成魚個体数は最高値で12個体であり、平成24年度の22個体より減少している。
厳密に調査月(年3〜5回)の平均個体数で比較してみます。22年度14.8→ 23年度12.5→ 24年度11.3→ 25年度10、と明らかに減少傾向です。
2.
平成22年度以降は毎年成魚個体数の最高値も減少傾向である。 29(22年度)→
16(23年度)→ 22(24年度)→ 12(25年度)
3.生息面積は、平成18年度は増加しているが、これは、平成18年度トカゲハゼの生息地で生息地底質改良事業の結果であり、その後は減少傾向である。
4.工事との関連
工事前は16個で変化なし(平成11年16.2、平成13年16.4)
海草移植工事後は、減少(16.4→8)
2003(平成15)から2004年はさらに減少(5.4→3.6)。2005年から2008(平成20)年は、増加傾向。工事はトカゲハゼ生息地より遠いところ(トカゲハゼへの工事の影響なし)
この間、2006(平成18)年3月、2008(平成20)年10月にトカゲハゼの生息地で生息地底質改良事業(砂干潟→泥干潟)。この工事で生息地が改良され、増加傾向になったと思われる。
2009(平成21)年は、土砂投入があり、減少(17.7→12.3)
2010(平成22)年は、工事が中断(高裁判決後)されたため、増加(12.3→14.8)
2011(平成23)年〜2013(平成25)は、トカゲハゼ生息地に1番近い護岸(イ・ニ護岸、E護岸、北側護岸)の改修工事があり、減少傾向(14.8(平成22) → 12.5(平成23) →11.3(平成24) → 10(平成25)
この間、2012(平成24)年3月、2013(平成25)年3月にトカゲハゼの生息地で生息地底質改良事業(砂干潟→泥干潟)をしているが
トカゲハゼの減少傾向を止めることはできていない。
年度 |
工事 |
個体数(年平均) 監視委員会の資料23(平成26年7月)の数値を元に計算 |
1999(平成11) |
工事前 |
16.2 |
2000(平成12) |
埋立認可 |
16.6 |
2001(平成13) |
大型海草機械移植(バックホウ) |
16.4 |
2002(平成14) |
海上工事始まる(3月開始宣言)。トカゲハゼ生息地から1番遠いところから |
8 |
2003(平成15) |
海上工事 |
5.4 |
2004(平成16) |
海上工事 |
3.6 |
2005(平成17) |
海上工事 |
8 |
2006(平成18) |
海上工事、航路掘削(トカゲハゼ生息地から遠いところ)、底質改良事業(3月) |
16 |
2007(平成19) |
海上工事、航路掘削(トカゲハゼ生息地から遠いところ) |
19.2 |
2008(平成20) |
1区護岸完成(3月)、底質改良事業(10月) |
17.7 |
2009(平成21) |
土砂投入(1月〜10年3月)、控訴審判決(10月) |
12.3 |
2010(平成22) |
工事中断(控訴審判決確定のため) |
14.8 |
2011(平成23) |
大型台風、埋立地の土砂が流出(8月)、埋立認可(7月)、工事再開10月 |
12.5 |
2012(平成24) |
トカゲハゼ生息地に1番近いところの護岸改修工事、底質改良事業(3月) |
11.3 |
2013(平成25) |
トカゲハゼ生息地に1番近いところの護岸改修工事、底質改良事業(3月) |
10 |
上記表をグラフにしました。
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大型海草機械移植や工事着工でトカゲハゼが減少し、その後底質改良で生息数が増加したが、浚渫土砂投入で再び減少した。
H22年度は、工事が中断したため増加したが、その後埋立地の土砂流出や、トカゲハゼの生息地近くの護岸改修工事などで再び減少し、H25年度は、個体数が10尾まで減少した。
工事前の16.6尾に比べると減少している。
下記は、環境監視委員会(平成26年7月)の資料
そのような具体的な資料があるのに、地裁判決は、トカゲハゼについて、「本件埋立工事の施工後、泡瀬地区におけるトカゲハゼの個体数はむしろ増加傾向にあることが認められ・・」(判決文、82ページ、9行目〜11行目)として、原告の訴え(工事の影響が軽微であるとは考えられず、本件環境図書に誤りがある)を棄却しています。工事が始まったのは平成12年度以降で、その後はトカゲハゼは減少したが、トカゲハゼの生息地で生息地底質改良事業もあり、18年度,19年度は増加傾向です。しかしトカゲハゼに影響を与える工事(トカゲハゼの近くの工事)は、近年(平成22年度以降)であり、近年は上記で示したように減少傾向です。平成24年、25年、トカゲハゼの生息地で生息地底質改良事業をしても減少傾向を止めきれません。「工事施工後は、トカゲハゼ生息数は減少しましたが、底質改良事業で1時回復しました。しかし、その後は浚渫土砂の流出・工事の影響で減少しています」が実態です。まさに、事実誤認に基づく、不当な判決であることが明らかです。白を黒とするこのような判決が許されるはずはありません。控訴審でこれらのことを明らかにしていきます。