新政権への要請

 

2013年2月22日に新政権に対して要請書「沖縄県沖縄市、東部海浜開発事業(泡瀬干潟・浅海域埋立事業)の再考を要請する。」を手交しました。次は、その行動の写真です。

なおこの行動には、ラムサールネットワーク日本・花輪伸一氏、日本自然保護協会・安部真理子氏、ヘリパットいらない高江住民の会・伊佐真次氏も同行しました。

 

内閣府に要請文を提出する泡瀬干潟を守る連絡会の小橋川共同代表

要請文を受け取るのは、内閣府沖縄振興局小平田浩司参事官

 

会議室を出てもなお議論は続きます(左は小平田参事官、右は小橋川さん)

 

次は、手交した要請文です。

 

2013222

内閣府 総理大臣 安倍 晋三 様

国土交通大臣 太田昭宏 様

内閣府 沖縄担当大臣 山本 一太 様

泡瀬干潟を守る連絡会

共同代表 小橋川共男 漆谷克秀

沖縄県沖縄市字古謝1171-3 コーポMK 1

                連絡先 前川盛治(泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長)

                携帯:090-5476-6628

 

沖縄県沖縄市、東部海浜開発事業(泡瀬干潟・浅海域埋立事業)の再考を要請する。

 

沖縄市の泡瀬沖合埋立事業(東部海浜開発事業)に基づく、泡瀬干潟・浅海域埋立事業が、20111014日から再開され、2012年度も8月から再開されました。しかし、この事業は、以下に述べるように、合理性もなく、緊急性もありません。このような無駄な公共事業によって国際的にも貴重な自然環境を破壊することは断じて許されません。

私たちは、東部海浜開発事業(泡瀬干潟・浅海域埋立事業)の再考を要請するものです。

 

以下その理由です。

 

《沖縄市の新たな土地利用計画に経済的合理性はありません。》

 

1. 規模が縮小した(187ha95ha)だけで、その内容は経済的合理性がないという第一次泡瀬訴訟の判決が確定した旧案と大差ありません。

2. 沖縄市の需要予測が過大であり、科学的根拠がありません。

1)施設規模に対する需要を約327万人(延べ人数、平成30年)と推計しているが、沖縄県の有名な観光地である首里城180万人、海洋博公園220万人(平成21年度)を上回る想定は、余りにも現実離れしています。観光客数の予測も、観光客数の激減の現状を無視するものであり、それを基にした様々な需要予測は成り立たない。2011年の沖縄市の県観光客予測数は、沖縄県発表の実績を134万人(25%の誤差)も上回っており、経済的合理性を欠くものとなっています。2012年も沖縄市の予測692万人は実績583万人を117万人(約20%の誤差)過大に予測しています。平成30年、沖縄市予測850万人とそれに基づく様々な需要予測は実現の見通しがありません。

2)ホテル、コンドミニアム、コテージ進出希望の企業は2社のみであり、これも意向であり確定ではありません。

3)商業施設や健康医療施設での進出希望企業はない。既に周辺にはショッピングセンターが乱立し、「パイの奪い合い」になっています。

4)多目的広場、展示、交流(スポーツコンベンション施設)は、毎年1.8億円の赤字を産む施設です。沖縄市の計画通り、全体が順調でも毎年2.2億円の赤字です。周辺の運動施設、商業施設とも競合します。また、税収増加分が普通交付税を考慮せず計算されていることから、沖縄市の赤字は毎年2.2億円を上回り、3億円近くになることも想定されます。

 

《新計画は、災害防止対策が極めて不十分です。》

 

1.     東日本大震災という悲惨な体験をした私たちは、この教訓を生かさなければなりません。しかし、新計画は、埋立地の液状化や津波被害に十分対応できるものとはなっておらず、埋立免許変更申請においては、地震、津波、高潮、台風、集中豪雨などの自然災害について、防災対策が示されていません。しかも埋立地盤高が、変更前の計画よりも国事業で20cm、県事業で1mも下げられています。

2.     2011年夏の台風9号でも、台風の高波浪が完成した護岸を越波し、埋立予定地の護岸が至る所で破損し、外海に土砂が流出するなど、埋立予定地内外の動植物への被害が広がっています。

3.     泡瀬地区は、台風や大雨により度々浸水などの被害に見舞われており、津波被害の心配も大きいです。泡瀬地区は海抜5m以下の所も多く、浸水地域の心配もあります。

  

4.     泡瀬干潟・浅海域の埋立は防災上も問題が大きく、沖縄市は、干潟の埋立に税金を使うのではなく、泡瀬地区の浸水対策など、市民生活の安全・安心に税金を使うべきです。

5.沖縄県地震・津波想定検討委員会は2011912日に、知事に「とりまとめ」を報告しています。その中で「海抜5mを最低限度の浸水域として設定し、できるだけこれより高い場所への避難対策をとることが必要である」としています。泡瀬埋立地は、海抜5m以下か限界の場所であり、避難対策を取らなければならないところです。また、同委員会は、今後の対策について、「東北地方太平洋地震や1771年八重山地方大地震の大津波の教訓から、歴史に学ぶ最大クラスの地震・津波からの避難」の検討も報告しています。泡瀬埋立地は、高台の予定もなく、避難できる建物が出来る保障もありません。

沖縄県津波被害想定検討委員会が2013年1月28日の委員会で、マグネチュード9の地震を想定した津波の浸水予測図をまとめました。それによると、泡瀬埋立地を含む沖縄市東海岸は想定津波の最大浸水深は、地盤(地面)から2.0m〜5.0mです。そして埋立地に近い沖縄市海邦町の津波最大遡上高は海抜8.4mであり、埋立地もそれに近い値が予測されます。

 また、内閣府は、2012年8月、近い将来発生する南海トラフでの地震による津波が沖縄県にも襲来し、沖縄市では3mの津波を想定しています。埋立地は2.5mの津波を想定した設計になっており、3m〜8mの津波が襲来したら大きな被害をもたらします。

 

《中城湾新港地区東埠頭浚渫土砂処分場造成としての泡瀬埋立に緊急性、合理性はありません。》

 

1. 国際物流拠点産業集積地域(旧・特別自由貿易地域・FTZ)構想は既に破綻しています。分譲用地の民間への分譲率は2.1%でしたが、今は1.7%まで低下しています。分譲用地は空き地だらけです。最近ではFTZとは全く関係のないIT企業などの誘致が始まっています。FTZの用地が売却できない沖縄県は、約460億円の県税でその尻拭いを行い、県財政の改革の大きな負担になっています。それにもかかわらず、県は2012年度予算で、FTZに賃貸工場を新たに8棟整備する経費として約24億円の県税を投入しています。失敗した事業に際限なく県税が投入されています。新たに建設される賃貸工場は、機械の設備まで県税が投入されるなど、一括交付金を一部の特定企業のために使用するなどの大きな問題も生じています。

2. 新港地区には既に立派な西埠頭がありますが、定期船がないためFTZ企業は1社も利用していませんでした。ここに立地する企業で構成する新港地区協議会は、定期航路の創設や西埠頭へのガントリークレーンの設置、電気水道料の軽減などを国や県に要請しています。東埠頭の浚渫は優先課題ではなく、その必要性はありません。定期船の実験が始まっていますが、同地区からの「移出」はなく、南日本汽船の赤字(2012年約4,000万円)を県税で補助しています。また、県全体の港湾の課題は、那覇港などのハブ化や輸送費の低減であり、新港地区東埠頭の整備は課題ではありません。

 

《埋立再開で貴重な自然環境が破壊されることは国際社会での責務に反する》

 

1.     新しい土地利用計画では干潟の98%が保全されるとしているが、干潟とそれに続く浅海域が95haも埋められます。干潟と浅海域は一つの生態系であり、既に1期工事の影響で2区の自然環境も悪化しています。コアジサシやウミガメの産卵場であった通信基地前の東側砂州も工事の影響で、満潮時海面下になり、大きな被害を受けています。

2.     泡瀬干潟は、生物多様性、自然資源、教育、観光、レクリエーションなど、多様な価値を持っています。ラムサール条約の登録潜在候補地にもなっており、20113月には環境省から「埋立は可能な限り回避するよう」意見が出されていますが、その意見は無視されています。

3.     今回の公有水面埋立免許変更申請では、埋立面積が半減し土地利用計画が変更されたことから、新たに正当な環境アセスメントを行わなければなりませんが、環境への影響は軽微とした過去の不十分で科学性を欠いたアセス結果を引用するだけで済ませています。泡瀬干潟が持つ地球レベルの価値について言及していない埋立免許変更申請には、合理性も正当性もありません。1区の護岸内はまだ生きた海であり、外海と海水の交換がありますが、行われている埋立は「空気圧送船による揚土」であり、1区の生物は生き埋めになります。

4.     10回生物多様性条約締約国会議(201010月)では「愛知ターゲット」が採択され、議長国日本はその実現に大きな責任を負っています。海域の生物多様性の保全は、国際社会では大きな責務となっており、政府と自治体は率先して行動しなければなりません。泡瀬干潟・浅海域埋立工事の再開は、国際社会での責務に大きく反しています。

  泡瀬干潟・浅海域は、サンゴの生息域でもあり、埋立地は生物のホットスポットと言われていました。工事が着工された2002年以降、新種が6種(事業者も確認)、絶滅危惧種が122種(事業者発表)も確認されていますが、20121231日には、新種で水没生息世界初の「アワセイソタナグモ」が発見されたことが報道されています。世界的な価値の高い、生物多様性の優れた場所、泡瀬干潟・浅海域はそのまま保全されるべきです。

5.政府は、1月31日、世界遺産条約関係省庁連絡会議を開き、2003年に世界自然遺産の候補地に選ばれた「奄美・琉球」を世界遺産暫定一覧表(暫定リスト)に記載することを決めました。今後、国内5カ所目の世界遺産本登録を目指す、としています。このような大きな動きがある中で、世界的に貴重な泡瀬干潟・浅海域の埋立てを強行することは、許されないことです。

 

《民主党政権は、泡瀬干潟埋立中止の公約を守り、事業を中止すべきでした。》

 

1.     そもそも民主党政権の20108月の泡瀬干潟埋立再開の決定が、情報公開、住民参加、合意形成の一連の民主的手続きが欠落したものでした。

2.     当時の前原大臣は、新たな計画について沖縄市や有識者と協議してきたと述べていますが、その過程はまったく知らされず、密室の協議の中で埋立再開が決定されました。

3.     東門市長は市長選の際に、地元の四政党と「経済的合理性がないときは推進しない」という協定を結んでおり、沖縄市民の多くは、その協定を信じて東門市長に投票したのです。経済的合理性について、四政党や市民、環境団体と何の協議もしないままに、大臣の承認を取り付けたことは、選挙民への裏切り行為と言わざるを得ません。

4.     民主党政策集index2009において、泡瀬干潟埋立事業を一例としながら環境負荷の大きい公共事業の見直しや中止を主張していること、特に干潟やサンゴ礁について保全を図るとしていること、また「コンクリートから人へ」という政権交代の理念は、国民との約束です。前原大臣による埋立再開決定はこれを裏切るものでした。

 

《新しく発足した、自民党・公明党の政権が、無駄な公共事業の中止・環境保全の立場から、東部海浜開発事業(泡瀬干潟・浅海域埋立事業)の再考をしていただくよう期待します。》

 

自民党・公明党の新しい政権が唱える「強靭な国家造り」は地震・津波・自然災害に十分対応できる防災・減災の国造りであると思われます。先に述べたように、この泡瀬埋立事業は、地震津波対策が極めて不十分です。また津波襲来の浸水地域が想定されている地域に莫大な国家予算を投入することは、財政の無駄遣いであり、強靭な国家造りと相容れません。沖縄市は、震災のリスク分散の立場から内陸部への企業誘致の検討を始めています。新政権は、将来に禍根を残す事業を再考し沖縄市の真の振興策を早急に作り出すべきです。

 

《現在、埋立中止を求める裁判(第二次泡瀬干潟埋立公金支出差し止め訴訟)が提起されていますが、工事再開を強行し既成事実を積み上げていくことは許されません。少なくとも、裁判の決着がつくまで工事は中断しなければなりません。》

                                      以上